「死ぬけどマナーだから」
10年近い付き合いの友人から先日言われた。
はじめに、ある会社に仕事内容の説明を受けに行くことになった。
連日35度前後の灼熱地獄、どんな服を着ていくのが適当だろうか。
無難にスーツか?しかし暑すぎるし死ぬ。事実、東京では熱中症で亡くなった方も少なくない。
この気候でのスーツ(ジャケット、ブラウス、パンスト、スカート、パンプス)は死ぬ。溶ける。そもそも超弩級の汗っかきなので会社に着く前に溶ける。
オフィスカジュアル?はそもそもよく分からないし、それらしき服は持ってない。
オフィスカジュアルかは分からないけど茶色のロング丈のシャツワンピースならある。
いつもTシャツにジーンズ、スニーカーかサンダルなので所謂キレイ目を持っていない。
迷った末に友人にメッセージを送った。
「会社の説明会に行くんだけどスーツかな?でもスーツだとしんど過ぎるよね。オフィスカジュアルっぽい私服でもいいかな」
今見ると、私服で行きたいけど責任は負いたくないから友達からお墨付きを得たい感がウザい。
「私服でいいんじゃないの」という返答を期待していた。
しかし実際に返ってきたメッセージは「無難にスーツでしょ」
私服のお墨付きが得られると思っていた私は「でもスーツだと冗談じゃなく暑すぎて死んじゃわない?」と返す。
そしてタイトルの返信である。
とにかく驚いた。本当にビックリして一度スマホをスリープにしてもう一度立ち上げた。
メッセージの内容は変わらなかった。
期待していた答えが得られなかった不満よりも、命よりマナーを優先するという返信内容に驚き、困惑した。
友人である私の命よりマナーが大事なのか?死んだらマナーも何もないだろ命より大切なマナーなんて無いだろと色々と頭の中に浮かんできたが「そうか〜」と返した。
数日たって相変わらず服に悩んでいたら、気温が一旦落ち着きを見せた。
そもそも灼熱地獄が異常だったので、これが通常の夏だと思う。
これくらいの気温ならスーツでも何とかいけるか、と覚悟を決めたら、会社からメールがきた。
おそらく暑い日になるだろうから涼しい格好で来た方がよい、ということだった。
疲れた。涼しい服装なんて無い。この気候の前に涼しい服装なんて無いんだ。
そもそも肌の露出をしたくないのだ。
とりあえず、ロングワンピースを着て道中でカーディガンを買おう。